カーエアコンの真空引きとは何?必要な物品や方法を解説します

カーエアコンの真空引きとは何?必要な物品や方法を解説します

カーエアコンの真空引きの目的ややり方、注意点などを解説する記事です。

「真空引き」という言葉をご存知ですか。真空引きとは、真空ポンプという専用の器具を使ってカーエアコンの配管内部を真空にすることをいいます。それではなぜ、カーエアコンの配管内部を真空にしなければならないのでしょうか?

実はカーエアコンの冷却効果を十分に発揮させるには、真空引きは欠かせない作業。カーエアコンにおける真空引きの重要性や作業に必要な道具、手順、注意事項についてまとめてご紹介していきます。

カーエアコンの真空引きとは何?

カーエアコンの真空引きとは何?

まずカーエアコンの真空引きとはどのようなことを指すのでしょうか?

真空引きを知るためには、カーエアコンの構造や仕組みを知る必要があるので、真空引きをする目的とともに解説していきます。

カーエアコンから冷風が出る仕組み

カーエアコンは家庭用エアコンの室外機にあたるコンプレッサーがエンジンルームにあり、室内機にあたるエバポレーターが運転席の足元にあります。そしてそれをコンデンサーでつないでいます。

この密閉された状況の中で、冷媒と呼ばれるエアコンガスを高圧圧縮しながら気化、液化、気化と繰り返し、熱交換器を呼ばれるエバポレーターで冷風となって車内に送りだされます。

そしてまたコンプレッサーに戻り循環されていきます。

循環を支えている配管を真空にするのが真空引き

カーエアコンは冷媒と呼ばれるエアコンガスを循環させることで成り立っていますが、コンプレッサーからコンデンサー、そしてエバポレーター、さらにエバポレーターから最初の行程であるコンプレッサーへと戻っていくわけです。

この行程をつないでいる配管内に入っている空気や水分を追い出す作業が真空引きで、エアパージともいわれており、カーエアコンの性能を最大限に引き出す重要な作業です。

真空引きの目的

真空引きをする目的とは、配管の中をエアコンガスで満たすためです。配管の中に空気や水が残っていると、エアコンガスで満たすことはできません。

真空引きをせずにそのままエアコンガスを注入すると空気や水分が混入してしまうので、配管の中を真空状態にすることが必要とされます。

空気や水は熱の吸収・放出する効率が悪く、エアコンガスの中に混じるとカーエアコンの冷却効果が低下してしまう恐れがあるので、真空引きは重要な作業です。

真空引きに必要な物品

真空引きに必要な物品

真空引きをするためには、専用の器具が必要です。

アニホールドゲージ

真空引きとガスチャージに使う器具で真空度を測ります。赤や黄色で色分けされたホースと、低圧側と高圧側の状態がわかるメーターがセットになっており、コンプレッサーやエアコンオイルと接続して使います。

3口タイプと4口タイプがあり、4口タイプだと真空引きとガスの充填を別のホースでできるので便利です。すべてセットになって1万円前後で購入できます。

真空ポンプ

配管内を真空にするためのポンプです。

手動もありますが、電動が主流で、電源スイッチを入れるだけで使うことができますが、オイルを入れないで使用すると故障することがあります。真空ポンプも1万円前後で手に入ります。

エアコンガス

真空引きなどで減ったエアコンガスを補填するために用意します。缶タイプで1缶200gが主流で、500~700円前後で購入できます

以上3点があれば真空引きが可能ですが、作業だけを考えればアニホールドゲージと真空ポンプの2点だけあれば事足ります。

真空引きの方法

真空引きの方法

真空引きの方法

真空引きは、配管内を真空にし、新しいガスやオイルを補充する作業ですが、次のような手順で行います。

作業の準備

まずは真空引きをするための準備を行います。室外機の側面にあるサービスポートのナットを取り外します。この時、2ヶ所あるサービスバルブをまだ全閉しておきます。

器具の装着

準備が終わったら真空ポンプにマニホールドゲージという器具を装着します。マニホールドゲージの低圧側と室外機の低圧側サービスポートをチャージホースで接続します。緩めすぎず締めすぎないように注意しましょう。

真空引きの開始

器具の装着が完了したらいよいよ真空引きの開始です。マニホールドゲージのバルブを開き、真空ポンプを電源に接続してスイッチをON。真空引きが開始されゲージの数値が下がっていくので、そのまま10分~15分ほど放置します。

気密テスト

真空引きが終わったら10~20分の気密テストを行って、完全な真空状態になっているか確認をします。真空ゲージの数値が「-0.1MPa」になっていることを確認したら、気密テストを行います。

真空ゲージのバルブを閉め、真空ポンプの逆流防止バルブを閉じてからポンプを止めてから5分ほど放置。マニホールドゲージの数値が「0」側に動いていないか確認します。動いていれば漏れの可能性があるので、各接続部を確認してもう一度真空引きを行います。

ガス漏れの確認

真空引きが完了したら、バルブを開く前にガス漏れがないかチェックを行います。

2つのサービスバルブのうち、細い方に六角レンチを使って90度開いてください。5秒程度でまたすぐに閉め、ガス漏れが発生していないかチェックしてください。

器具の取り外し

配管が真空状態になり、ガス漏れも発生していなければ作業のための器具を取り外していきましょう。すべてのバルブが閉まっていることを確認し、チャージホースを室外機のサービスポートから取り外します。

ガスの充填

真空状態になった配管の中に、エアコンガスを充填していきます。サービスバルブを2つとも全開にします。

後片付け

接続ポートからカプラーを抜いて、後片付けをすれば真空引きの作業は終了。カプラーを抜くときは外側に向けてずらすようにしましょう。2つのサービスバルブ、サービスポートにキャップを装着して完了です。

作業時の注意事項

作業時の注意事項

真空引きはエアコンガスを扱う作業ですから、安全に行うための注意が必要です。

エアコンガスを大気中に排出しない

現在、市販されているエアコンガスは代替えフロンを使用した環境負荷が低いものが主流ですが、それでも大量に排出すると違反になります。

作業中にはどうしても少量排出されてしまいますが、極力排出しないようにしましょう。

バルブの開閉に注意

ガス缶を接続した状態で、高圧側のバルブを開きっぱなしにした状態でエンジンをかけると、ガス缶に高圧側の圧力が逆流。破裂する危険性があります。

火気厳禁

少量とはいえガスを使う作業です。ましてやガソリンという引火物質が近くにある状態での作業です。

ガス缶は手順を間違えただけで爆発する可能性がありますし、タバコの火などで引火する危険性もありますので、十分注意しましょう。

カーエアコンに真空引きは欠かせない作業

カーエアコンに真空引きは欠かせない作業
真空引きはカーエアコンの配管をエアコンガスで満たし、冷却効果を十分に発揮させるために欠かせない大切な作業です。もし配管の中に空気や水が残っていれば、カーエアコンの効きが悪くなってしまいます。

ご紹介した手順を参考にしていただければ真空引きはご自身で行うこともできますが、ガスを取り扱うことになるので、エアコンガスの排出させないこと、火気を近づけないことなどに注意が必要です。

また真空引きを行うためには、専用の器具が必要ですし、充填するガスの量も車種によって量が異なります。何よりガスを使うので火気が近くにあると大きな事故につながる恐れもあり、最大限の注意が必要です。

作業自体が危険性を伴っていますので、プロにお願いするのも1つの方法です。実は作業料金は器具を準備するお金とそれほど変わりませんので、プロに依頼して安全・確実に行うことをおすすめします