カーエアコンのガスにはどのような役割があるかご存知でしょうか?
カーエアコンを作動させるために大切な役割を果たしているのがガスですが、種類により環境への影響が違います。
今回の記事では、カーエアコンガスの役割を解説した後に、ガスの種類ごとの特徴や次世代ガスとして注目されている「R1234yf」についてご紹介していきます。
目次
カーエアコンのガスの役割とは
カーエアコンのガスの役割とは、吹出口から出る風を冷やすことです。
ガスはカーエアコンの内部にある「コンプレッサー」で圧力をかけられて、熱交換器である「エバポレーター」を冷却します。
そして、エバポレーターが冷却されることで吹出口から冷たい風を送り出す…というのがカーエアコンの仕組みです。
そのため、もしガスの圧力や量に異常があれば、カーエアコンが効かなくなってしまうこともあり得ます。
車の点検では「ゲージマニホールド」という機器を車に接続してガス圧を測り、もし不足しているようであればゲージマニホールド経由でガスを補充します。
カーエアコンのガスは、吹出口から送り出す風を冷却するという重要な役割を担う存在です。
カーエアコンのガスの種類をご紹介
それでは、カーエアコンのガスにはどのような種類があるのか見ていきましょう。
R12
「R12」は比較的以前に製造された車のカーエアコンで使用されるガスの種類です。
製造年の新しい車ではほぼ使用されませんが、その理由はオゾン層を破壊する効果が高く、モントリオール議定書第4回締約国コペンハーゲン会議において1995年末までに生産中止すると決定されたためです[1]。
R12は地球環境を破壊する原因となる「特定フロン」とされ、現在では使用されていません。
HFC134a
「HFC134a」は、現在の多くの車においてカーエアコンで使用されている種類のガスです。
R12と違いオゾン層を破壊することはありませんが[1]、強力な温室効果ガスであるとされており、その効果は同じく温室効果ガスである二酸化炭素の1万倍を超えるのではないかとも言われています[2]。
現在ではカーエアコンの主流となっているHFC134aですが、車の解体時には回収が必要とされるほど地球環境には好ましくない種類のガスです。
新エアコンガス「R1234yf」の特徴
新エアコンガスとして注目されている「R1234yf」の特徴は、地球環境への負荷が非常に少ないことです。
HFC134aと同じくオゾン層を破壊する可能性が低く、さらに地球温暖化効果も低くなっていることから[3]HFC134aに代わるカーエアコン用のガスとして推奨されています。
ヨーロッパ各国ではすでに、カーエアコン用のガスを全面的にHFC134aからR1234yfへと切り替える動きが活発になっています[3]。
燃焼する性質を持つことで安全性の検証が行われているところではありますが、オゾン層を破壊せず、温室効果ガスとしての効果も非常にR1234yfは今後、カーエアコンへの使用で主流になっていく種類のガスだと考えられるでしょう。
「R1234yf」と「HFC134a」の違い
「R1234yf」と「HFC134a」には温室効果ガスとしての効果に違いがありますが、その他にもさまざまな違いがあるので下記の表に違いをまとめました[4]。
R1234yf | HFC134a | |
地球温暖化係数 | 4 | 1,300 |
オゾン層破壊 | なし | なし |
冷却性能 | 95% | 100% |
燃焼性 | 微燃性 | 不燃性 |
R1234yfの冷却性能は、HFC134aを100%として比較したときのパーセンテージで表しています。
R1234yfとHFC134aを比べてみると、地球温暖化係数に大きな違いがあることが目につくはずです。
地球温暖化係数は低いほど温室効果ガスとしての効果が弱く、R1234yfはほとんど地球温暖化への影響を及ぼさないと考えられます。
冷却性能はHFC134aに比べてわずかに劣りますが、5%程度の違いであればカーエアコンを使っていて体感できないほどでしょう。
R1234yfはわずかに燃焼性を持つことからHFC134aに比べて危険性が高いのではという考えもありますが、日本やアメリカの自動車工業会は次世代のカーエアコン用ガスとして、他の種類のガスよりR1234yfを推奨しています。
全世界的にSDGsが推し進められている現在、R1234yfは地球にやさしい新エアコンガスとして注目を集める存在です。
カーエアコンガスは種類により特性が違う
カーエアコンガスには主に3つの種類がありますが、種類によりそれぞれ特性も大きく違うことはおわかりいただけたはずです。
現在の車に使用されているHFC134aは地球温暖化係数が高いことから、今後はR1234yfへと置き換わっていくのではないでしょうか。
ただし、現在ではまだ温室効果ガスであるHFC134aが主流です。
カーエアコンガスとしてHFC134aを使用している車に乗っている場合、地球温暖化防止の観点からできることはカーエアコンの使用をできる限り控えることです。
そして、そのためにはカーエアコンの冷却性能を高めておくことが大切。
カーエアコンは埃やゴミが詰まると効きが悪くなるので、「空気の洗車屋さん」でカーエアコン洗浄をして効きをよくしておくことが地球へのやさしさにつながるはずです。
車内の快適さにもつながりますので、定期的に洗浄をしてカーエアコンを万全な状態に整えておきましょう。
[1]参照:JSTAGE:(PDF)「オゾン層破壊係数」・「温暖化係数」・「遺伝子マーカー」
[2]参照:環境省:(PDF)地球温暖化にも大きな影響が・・・
[3]参照:NEDO:NEDOプロジェクト実用化ドキュメント